2021年2月23日、本コンテストに寄せられた数多くの応募作品の中から、一次選考で厳選された8名がオンライン上で集結し、決勝戦が開催されました。
決勝戦は、タリーズコーヒージャパン創業者/元参議院議員の松田公太氏MCの元進行し、決勝プレゼンターたちは、特別審査員の総合エンターテインメントプロデューサー・つんく♂氏、筑波大学准教授の落合陽一氏、またwellvill審査員のCEO 松田智子、CTO 樽井俊行に対して、それぞれ3分という持ち時間の中でプレゼンテーションを行いました。
1人目の吉野明日香さんは、自分が過去に見たイメージや言葉から想起されるイメージなどの材料として、アウトプットの目的や方向性を指示することで、そこから複数のイメージがアウトプットされるような「頭の中のイメージをそのまま伝えることができるAI」をテーマにプレゼンを行いました。
審査員からは「人間の思考の信号を画像などに結び付けるメカニズムで実現できるのではないか。2025年にむけたテーマとして斬新で面白い。(CTO樽井)」、「これができるようになればエンタメの仕事が楽になる。誰もがプロデューサーになれるチャンスAIだ。(つんく♂氏)」というコメントがありました。
2人目の丸山莉捺さんからは、コロナ禍で握手会からオンラインお話会にシフトしたアイドルとの交流で、推しのアイドルと会話する時間を手に入れたのに緊張で思うように話すことができず楽しめない、というアイドルファンに向けて、推しのアイドルの癖や喋り方、動きを学習させ、実際のイベントと同様の環境で練習できるアイドルアバターAIを活用したいというプレゼンがありました。
審査員からは「ファンへの対応やオーディションの練習にもなる、実はアイドル側が使いたいAIかも。(つんく♂氏)」、「当社でも対話エンジンの中に自由な会話をする部分を作っている。そこにアイドルの個性を植え付けることで、その人そのものをAIで作るというのは近い将来実現できると思う。(CTO樽井)」などの意見が出ていました。
3人目の山後喬さんは、平常時には広告サイネージ、歩く街頭、コンシェルジュとして機能し、災害時は体内から防災セットやAEDが取り出せる、非常用電源となりスマートフォン等の充電ができるなど、平常時と非常時をつなぎ、人と共に生活する「人型の広告AI“tera-su”」について、ご自身の被災経験をもとにプレゼンしました。
審査員からは「平常時から何らかの形で触れていく、身近に置いておくのはとてもいい発想。(つんく♂氏)」、「ロボットとAIと人に何ができるか3つの視点がうまく組み合わされていて、これからどんな形で活用できるのか想像が広がる。(CEO松田)」といった感想がありました。
4人目の吉安和隆さんは「人の役に立ちたい」という本能を顕在化させるAIをテーマにプレゼンを行いました。AIが偏見や無意識な固定概念を取り払った提案をしてくれるだけでなく、実際の行動や感情を分析し可視化することができ、人とAIが共存することでその中で人と人が繋がって未来を創っていくような社会を実現できるのではないかという内容でした。
審査員からは「設計の中で具体的なアプリケーションや場所が絞られればサービスインするのではないか。(落合陽一氏)」、「我々も感情を数値化しどの様に活用していくかを研究している。AIを通して人と人とがギブ&テイクしていく過程で感情の変化を可視化できれば、ハッピーな世の中になる。(CEO松田)」などのコメントがありました。
5人目の伊東範太郎さんは、介護福祉士の観点から食事・服薬・記録を補助するAIロボットの提案を行いました。介護の現場では服薬のミスが起こってしまうため、スタッフ2名でダブルチェックを行っており、食事の量などを管理し、利用者の状態に合わせた形状で薬を提供できるのはもちろん、職員の負担を軽減、利用者の食事の時間を楽しくすることが出来るのではないかという内容でした。
審査員からは「有料老人ホームの食事の現場は、介助などの負担が大きい。みんな欲しいと思っているものなので是非どこか作ってほしい。(落合陽一氏)」、「このアイデアは誰でも具体的にイメージできて、すぐに必要なものなので実現していただきたい(MC松田公太氏)」などの意見がありました。
6人目の舞優華さんは、「もう一度あなたに会いたいという思いを叶えるAI」をテーマにプレゼンを行いました。コロナ禍でのご家族との別れをきっかけに発想したのは、故人の声や用紙、性格、口調を解析したデータを人型ロボットに投影し、AI技術で言葉を発する命日に故人に合うことができるAIです。このAIによって精神的な安心感や寂しさを軽減する効果をもたらし、生きる希望につなげることができるという内容でした。
審査員からは「デジタルヒューマンを作るための材料はたくさんあるので近い将来そういうサービスが出てくると思う。(落合陽一氏)」、「命日しか使えないというのは七夕みたいでロマンティック。(つんく♂氏)」などの意見がありました。
7人目の浅野輝さんは、コロナ禍の自粛やオンライン化によって偶発性が低減した点、またAIによる差別に着想を得て「攪乱としてのAI」をテーマにプレゼンを行いました。従来の機械学習は目的関数の最大化が重視されていたが、ずれやほころびを生むための非合理性も大事なのではないか、それによって社会というフィードバックループにずれを発生させ、人々に驚きを与えたり差別などを克服したりする契機につながっていくという内容でした。
審査員からは「実世界で起こってしまうバイアスを拾い集めてみるだけでも面白いのではないか。(落合陽一氏)」、「本来、たくさんのデータからの一番確立の高い結果を導くのがAIなのだとしたら、その逆で偶発を促すAIという発想が面白い。(つんく♂氏)」などの感想がありました。
最後のプレゼンター・米窪仁子さんは、AI技術によって「歴史上の人物と対話ができるようになったら面白い」というアイデアをもとにプレゼンを行いました。AI技術で歴史上の人物と対話ができることで、歴史に対する理解が深まり特別な授業ができる、歴史が好きになるきっかけ作りになるのではないかという内容でした。
審査員からは「高校生や大学生だけでなく、小さなお子様でも興味のわく分野ではないか。(CEO松田)」、「単純に年号だけ覚えるのは難しいし理由がわからない。こういったAIがあれば勉強に気持ちが入るのではないか。(MC松田公太)」という意見がありました。
この様に、幅広い層からそれぞれの経験や興味にヒントを得て、多様な視点でプレゼンテーションをしていただきました。プレゼンテーション終了後は別室のブレイクアウトルームに移動し、審査員一人ひとりの意見を聞いて、受賞作品を選びました。
最後に、ウェルヴィル株式会社のCEO 松田 智子から、「今回選ばれなかった方、またこの8名に入っていない方々のアイデアも、良いと感じたものをこれから実現していきたいと思います。その時にお声がけさせていただき、一緒に新しいものを作り上げたていけたらと考えています。次の企画についてもいろいろと考えていますので、アイデアを最終的にどうやって社会に実装していくかについても、また一緒に活動していけたらと思います。ありがとうございました。」と挨拶し、締めくくりました。